優先権主張という手法 [特許]

発明研究会の仲間には発想の豊かな人がいる。「~さん。りんごのままで、ワイン発酵が実に簡単な方法でできる。」「食べるとすごく美味しいが、アルコール度で2パーセント前後のものが一番良美味しい。」と言い出した。「もうじきその試作品が完成するので持ってくるので食べてみてください。」「少々皮が厚くて糖度のあるものならどんな果物でもそうなる。」「ぶどうでも良いかもしれないが、そこまでは試作していない。」

てっきり、りんごをベースにした液体のワインだと思っていたら「皮はそのままで、普通にりんごを食べるようにしたものだ。」と言い出すではないか。最初の「りんごのままで」を聞き落としてしまっていたらしい。

「それならどこにもないアイデアである。地場産業や農協の店舗、スーパー等でも見たことはない。権利化は可能だと思われるが先行技術調査などはしているのか。」「インターネット検索でも良いがなれていなければ発明相談日に発明協会へ行って相談して見ることだ。秘密厳守になっているので安心できるし、弁理士さんが来ている時の方が良いかもしれない。」(その日は新聞等で案内している。)「似たような他人の出願文献を読んでみることで自分達のアイデアをスキルアップすることができる。」(相談に行けば似ているような先行技術書類を打ち出していただける。出願する前にこの作業をしておくことで無駄な出願は避けられる。研究会の例会で一度発表しておくと完全ではないもののこの作業が幾分省略できる可能性がある。)

「データーはどのくらいそろっているのだ。」と聞いてみた。「仲間内で試作しているだけで完璧なデーターはない。」「不完全なものであっても少々のデーターや製造方法(確実にワイン発酵できているなら、製造方法と実施例にそのアルコール度数や食感等を表示して、図面に作業手順などをしっかり記載して)で出願しておいて、酒造メーカーや、農協などの組織に提案し再度実験していただいて確実なものを再出願するという方法もある。」とアドバイスした。(先のものが出願されているので権利保護はできる。二度目に出願するときは共同出願と言う方法もある。)

「最初のものより1年3ヶ月までなら優先権主張という方法があるが、最初のやつは取り下げということになる。」「出願費用が二重にかかってしまうだけだ。出願書類を自分たちで書ければ安く済むではないか。」「最初から完璧なものにしたいなら少々実験してもらうのに食品工業試験場の技官や産学官の大学教授にお願いすこともできる。もう少し経てばメーカーの紹介で医学部の教授たち(準教授のグループ)ともコンタクトできるようになる。」

「いずれにせよ、知り合いがいる(工業試験場にも、大学にも、県の公害研究所にも)ので紹介が必要なら相談してくれ。ジョイントだけは出来る。」「検査項目によっては費用がかかるかもしれない。」(仲間内で取り組んでいることなので彼一人ではその判断ができないので相談してからということにして。)

「大学の方にお願いすれば専属の弁理士さんがすることになり、費用がかかるけれど、・・。ロイヤリティーは商品になって何パーセントという契約だけで良いはずだが、・・・・。」商品化するとき彼等が力にはなってくれるだろう(製造先や売り先などのジョイントはしているようである。)。

私にはもっと詳しく話をしているが、権利化がまだだと判断しているのでこれ以上書くことができない。発想とアイデアは彼らのものである。

その後、例会の席で「どうなっています。」と確認すると「まだ進んでいない。」と言う答えであった。

本当は良いアイデア(発想)を県や市、研究機関がピックアップして商品化するシステムが構築されなければならないのだが、技術担当者も、コーデネーターも、研究者たちもみんな企業の方に向いてしまっているような気がする。個人でもいずれ起業化するかもしれないし、何処かの組織が商品化するかもしれないじゃないか。

 注 特許は思想(アイデア)を出した人に与えられるものであり、実験した人のものではないことになっている。少なくとも、制度の上ではそのようになっている。この辺は相互に確認し合うことが必要になるだろう。アイデアだけでも、実験だけでも発明は完結しないと言うことである。

個人やグループで両方できればよいが、そんなにはいない。お互いがお互いの存在無しにはできない事柄である。簡単に言えば、ペア・システムということであり、生存の論理(律)と言うことだろう。お互いの利益のあるようにしなければならないのだが、特許の制度と持分などを明確にしておかなければならないと言える。

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